肌色は1本では表現できない
色鉛筆でリアルな肌色を描こうとするとき、市販の「肌色」1本では足りないと感じる方も多いはずです。
確かに「うすだいだい」といった名前の色鉛筆が販売されていますが、それだけで肌の複雑な質感や色合いを表現するには限界があります。
人の肌は、部位によって色味が異なるだけでなく、血流の良し悪し、光の当たり方、年齢、体調、さらには気温や感情によっても色が変化します。
たとえば、鼻の先や耳たぶは赤みを帯びることが多く、あごや首元は青みや影が出やすいなど、一枚の肌の中にもさまざまな色が存在しています。
このため、リアルな肌を描くには、複数の色を意図的に組み合わせ、微妙な差異を丁寧に再現していく必要があります。
基本となる色の組み合わせ
ベースカラーの選び方
肌の基本色としては、薄橙色(ペールオレンジ)、クリーム色、ベージュなどがベースになります。
これらを軽いタッチで重ねていくことで、自然な明るさと透明感を表現できます。
紙の白さを活かすために、最初は塗りすぎず、全体の明度を保ちながら色を乗せていくのがポイントです。
肌の明るさや透明感を調整するために、アイボリーや淡いイエローを最初に薄く下地として塗る方法もあります。
これにより、肌全体にやわらかさとあたたかみが加わります。
影色の加え方
影をつけたい部分には、ブラウンや赤茶、ラベンダー、場合によってはグレーを薄く重ねることで、深みと立体感が出ます。
影の色は単なる黒ではなく、環境光や肌の色に合わせて微妙に変えることが重要です。
例えば、暖色系の影であればやわらかく、冷たい印象を与えたい場合は青みのあるグレーを使うと効果的です。
濃く塗るのではなく、何度も重ねて濃淡をつけるのがポイントです。
シャープな影よりも、ふんわりとしたグラデーションを意識すると、肌がよりリアルに見えます。
血色を表す色
頬や指先などの血色を表すには、ピンクや赤系の色をふんわりと重ねます。
特に赤系は発色が強いため、軽く塗って少しずつ色を重ねていくと失敗しにくくなります。
血色表現においては、塗り方だけでなく「どの色を選ぶか」も重要です。
やわらかい印象を与えるにはサーモンピンク、明るさを強調したいときはコーラル系を使うと自然です。
さらに、赤だけでなく少し青みがかったピンクを混ぜると、冷たい印象や透明感を表現することができます。
描きたい人物の雰囲気や年齢に合わせて色の温度を調整すると、より説得力のある肌表現が可能になります。
色を混ぜる順番と重ね方
色鉛筆で色を混ぜる際は、基本的に明るい色から順に塗っていくのが理想です。
これは、明るい色は下地として他の色をなじませる役割を果たし、透明感や柔らかさを演出するからです。
先に暗い色を塗ってしまうと、その上に明るい色を乗せても色が沈んでしまい、肌の明るさや透明感が失われてしまいます。
そのため、ベースカラー → 血色 → 影色の順で進めるのが基本となります。
さらに、重ね塗りの際は塗る方向にも注意を払うとより効果的です。
肌の質感を滑らかに見せたいときは、円を描くように優しく塗ったり、複数の方向から斜めに塗り重ねることで、紙の目を活かしつつ自然なトーンを作り出すことができます。
色を重ねるときは、常に少しずつ力を加減しながら塗るよう心がけましょう。
塗る際は力を入れすぎず、筆圧をコントロールしながら丁寧に色を重ねるようにしましょう。
紙の凹凸を活かして色を重ねることで、肌の質感を立体的に見せる効果が生まれます。
必要に応じて途中で練り消しゴムや綿棒などを使ってやわらかくぼかすと、より滑らかなグラデーションが作りやすくなります。
また、何色かを交互に塗り重ねることで色同士が自然に混ざり合い、単調にならず深みのある表現が可能になります。
ブレンダーや白鉛筆を活用する
色鉛筆だけではなめらかな肌表現が難しいときは、色をなじませるための「ブレンダー」や「白鉛筆」を使うと効果的です。
ブレンダーでこすると色同士がなじみ、より自然なグラデーションになります。
白鉛筆は明るさを足すだけでなく、全体を柔らかく見せる効果があります。
よく使われる組み合わせ例
- 明るい肌色:クリーム + ピンク + ライトブラウン
- 健康的な肌:オレンジ + サーモンピンク + ベージュ + ブラウン
- 日焼けした肌:黄土色 + 赤茶 + ダークブラウン + グレー
まとめ
肌色は単色で描くのではなく、複数の色を重ねることで奥行きやリアリティを持たせることができます。
明るい色から順に重ね、ブレンダーや白鉛筆を活用することで、より自然な肌表現が可能になります。
自分の目で肌の色味を観察しながら、自由に色を組み合わせてみてください。